最近とくに変化のなかった我が家の長男。(引きこもり)
先日いつものように部屋に食べ物を届け、「どうよ、調子は。」と声をかけました。
珍しく口を開きました。「短期のバイトを探してる・・」
息子の思わぬことばに驚きました。
どんな心境の変化があったのか。
嬉しい半面、これだけ長く引きこもってると、バイトとはいえ慎重になりすぎて決められないのではと心配にもなりました。
そしてそのまま気持ちが冷めてしまうのではないか・・・
以前にも似たようなことがあったので。
「私の友達も心配してくれててね、簡単なバイトあるよ、頼んでみようか?」
しばらく間があってから「考えてみる」と長男。
2年ほど前、就職した会社で人間関係で嫌なことがあり、無断欠勤が続き、連絡が全く取れなくなってしまいました。
その間も毎日のように会社の人が訪れ、玄関先に食べ物を置いていってくれたそうです。
終いには気配がない、最悪の事態になってるんじゃないかと社長さんから連絡がありました。
私は気が気ではありませんでした。
社長さんは合鍵を貸してほしいと高速を飛ばして我が家へ来ました。
驚きました。
こちらから行くのも待たずに。
私達も急いで向かいました。
息子は無事で・・涙が出ました。
話し合いをした末、辞める意外の選択肢は本人にはありませんでした。
理由はいくつかあったようですが、あまり言いたがらなかったです。
あんなに思い詰めて病んでしまった長男を見たのは初めてでしたが、あの時はとにかく元に戻って欲しい、もうちょっと踏ん張ってほしいというこっち側の考えを押しつけてしまっていたかもしれません。
本人の辞めたいという意思は固く、結局その後マンションを引き払い、家に連れて帰ることになりました。
それから息子の引きこもり生活が始まりました。
私自身もショックだったし、いちばん苦しんでいる息子の気持ちを、しっかり受け止めてあげられる余裕がありませんでした。
就職が決まった頃のことが頭をよぎりました。
みんなが喜んでくれてお祝いをしてくれたこと。
部屋探しから始め、家財道具一式を揃え、トラックを借り家族総出で力を合わせて引っ越し作業をしたのが一昨年の3月。
不安もありましたが、あの頃本人はやる気に満ちていました。
就職先の社長さんや会長さんたちに大変気に入られ、ご家族もと食事に誘っていただき、その後も良くしていただきました。
本人も初めての自炊生活で、料理に目覚めたのか、何か作ると写メを送ってきて最初は充実しているようでした。
こちらに戻ってきたときは、初任給入ったからとお寿司屋さんに連れて行ってくれました。
感激だったのを覚えています。
そんな息子に私は安心しきっていました。
簡単に行き来できる距離ではなかったにせよ、本当に辛い思いをしてるのに気付かなかった、親として助け舟を出せなかったことはとても悔やまれます。
今はもう自分自身と向き合うのに充分な時間を費やしてきたはずなので、ただ自分がやりたいこと、できそうなことを少しずつ始めてくれたらいいと思っています。
先日、尾石晴(ワーママはる)さんのVoicyの中で紹介された『はずれ者が進化をつくる』の新書を購入しました。
届いて早速読みました。
いつもはキンドル本なんですが、今回は息子たちにも読んで欲しかったので敢えて。
最近長男のことで漠然と考えていたことがあります。
読み進むにつれて本の内容と息子の状況と私が息子に対し考えていた事が重なり引き込まれていきました。
帯だけ見ても、興味深い本です。
植物や生物などが生息する自然界は完璧です。
その素晴らしい営みに驚くとともに、改めて生命の尊さを感じました。
「多様性」についても深く知ることができました。
多様性とは幅広く性質の異なる群が存在することです。
私達が生きていく上で学ぶべきことがたくさん書かれています。
あらゆる物事に、人はものさしを使って優劣を測り、他と比較します。
無意識にそんな意味のないものの見方を息子に対してもしていたのかもしれません。
そのせいで私は親として息子本人の本質を見てやれていなかった。
それだけでなく傷つけてしまったこともあるでしょう。
彼らしさを活かせる場所が、きっとあの水槽の中にはなかっただけ。
生物たちは生き残るためにオンリー1になれるナンバー1のポジションを探します。
それは必ずあります。
なければ滅びてしまいます。
人間の世界も一緒です。
勝てないところでは戦わなくていい。
頑張らなくてもそれなりの評価を得られる得意なこと、それでいて自分が好きだというものを見つけてほしい。
自分の強みを知り、息子がここならやれるというニッチな場所を見つけることができたらいいと思う。
※【ニッチ】とは・・・元は建築用語で建物の一部をくぼませて作る空間のことで飾り棚のようなもの。ビジネスでは「スキマ産業」とも言われる。小規模で見過ごされやすい領域のこと。地球上の生物や植物の世界もそれで成り立っている。種の保存のためには生存競争に勝つか、あるいは同じ場所なら棲み分けをする。
私には叶わないような優れた能力を持っている息子。
不器用で少し弱いところもありますが、彼の個性は宇宙の歴史上唯一無二のものです。
誰もがそうです。
とにかく動かなければ何も始まりません。
リハビリでもいいから、一歩を踏み出してほしいです。
子供とはいえ、責任ある成人男性です。
親として手は出せませんが目は離さず、見守り応援したいと思います。
この1年半は、失った時間ではなく息子にとって必要な1年半だったと思いたいです。
それは今後の息子しだいですね。
がんばれ、長男!