ピンチはチャンスとも言われますが、危機的な状況に陥ることがないように、私は無意識に子供のころから注意を払いながら生きてきたような気がします。
すごく小心者だったかもしれません。
小学校時代は忘れ物をするのが怖くて、時間割表と連絡帳とにらめっこしながらランドセルに教科書や持ち物を詰めこみ、さらに心配で翌朝にも確認していたのを覚えています。
宿題も一度も忘れたことはありませんでした。
先生に叱られるのが怖かったんだと思います。
一度注意されたことは二度と言われてたまるかと思っていました。
働くようになってからも準備には入念に時間をかけ、頭の中でシュミレーションしてみたり、約束があれば不安なのでかなり早くに目的地に到着するといった具合でした。
なので今まで大きなチャンスもありませんでしたが、大きなピンチに見舞われたこともあまりありません。
そんな私が記憶の限りで、人生最初のピンチを味わったのは小学校4年生の時です。
10歳の女の子にとって痛みを伴うショッキングな出来事でした。
週末に友達と電車に乗り隣町へよく遊びに行きました。
その日も20分くらい電車に揺られ川越駅(埼玉県)に着きました。
駅周辺にはたくさんの店やデパートがあり、中でもかわいい小物雑貨や文房具などのお店は小学生の女の子にとっては、ワクワクキュンキュンの場所でした。
その日も仲良しの子とお出かけし、買い物をして楽しんでいました。
デパートの屋上にはちょっとした遊具などがあります。
そこは初めての場所で、私は象さんの滑り台によじ登りました。
鼻の部分で滑り降りる感じの、象の形を忠実に再現したもので、柵などはありません。
思いのほか象の頭がツルツルしていて、私は足を滑らせ勢いよく落ちてしまいました。
しかも顔から。
かなりの衝撃と痛みでした。
自分の口を触ると歯がありません。しかも血だらけでした。
目の前にはぽっきり折れた右の前歯が落ちていました。
折れた前歯を握りしめ、公衆電話から泣きながら母親に電話をかけました。
永久歯が一度しか生えないのは知っていました。
もう二度と生えてこないと悟った、あの時の絶望感と恐怖は今でも忘れられません。
女の子なのに歯欠けのまま生きてくしかないのか、と本気で考えました。
しかし歯医者で「差し歯」の存在を知り、私は「差し歯」に救われたのでした。
ピンチは方向を変えられればチャンスとなるもので、それが大きいほど成果も大きくなるものだと考えます。逆転ホームランみたいな。
でもそんなことはそうそうありません。
でも確かにピンチは自分を成長させてくれるためのチャンスだと思います。
もし窮地に陥ってしまったら、そう前向きにとらえる方が、きっと状況は好転するはずです。
そして逃げたくなるような辛い状況にあったとしても、謙虚に、誠実に、丁寧に。
ピンチがピンチのままで終わることはないのです。
そして、チャンスに変えようがない私の「差し歯」の話はピンチではなく、ただの「事故」の話だったかもしれません・・・(笑)